第百九十六条 株式会社が株主に対してする通知又は催告が五年以上継続して到達しない場合には、株式会社は、当該株主に対する通知又は催告をすることを要しない。
2 前項の場合には、同項の株主に対する株式会社の義務の履行を行う場所は、株式会社の住所地とする。
3 前二項の規定は、登録株式質権者について準用する。
第百九十七条 株式会社は、次のいずれにも該当する株式を競売し、かつ、その代金をその株式の株主に交付することができる。
一 その株式の株主に対して前条第一項又は第二百九十四条第二項の規定により通知及び催告をすることを要しないもの
二 その株式の株主が継続して五年間剰余金の配当を受領しなかったもの
2 株式会社は、前項の規定による競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
3 株式会社は、前項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二 前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額
4 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
5 第一項及び第二項の規定にかかわらず、登録株式質権者がある場合には、当該登録株式質権者が次のいずれにも該当する者であるときに限り、株式会社は、第一項の規定による競売又は第二項の規定による売却をすることができる。
一 前条第三項において準用する同条第一項の規定により通知又は催告をすることを要しない者
二 継続して五年間第百五十四条第一項の規定により受領することができる剰余金の配当を受領しなかった者
第百九十八条 前条第一項の規定による競売又は同条第二項の規定による売却をする場合には、株式会社は、同条第一項の株式の株主その他の利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨その他法務省令で定める事項を公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、三箇月を下ることができない。
2 第百二十六条第一項及び第百五十条第一項の規定にかかわらず、前項の規定による催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主及び登録株式質権者の住所(当該株主又は登録株式質権者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先を含む。)にあてて発しなければならない。
3 第百二十六条第三項及び第四項の規定にかかわらず、株式が二以上の者の共有に属するときは、第一項の規定による催告は、共有者に対し、株主名簿に記載し、又は記録した住所(当該共有者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先を含む。)にあてて発しなければならない。
4 第百九十六条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定は、第一項の規定による催告については、適用しない。
5 第一項の規定による公告をした場合(前条第一項の株式に係る株券が発行されている場合に限る。)において、第一項の期間内に利害関係人が異議を述べなかったときは、当該株式に係る株券は、当該期間の末日に無効となる。
第百九十九条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
5 募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。
第二百条 前条第二項及び第四項の規定にかかわらず、株主総会においては、その決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。この場合においては、その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めなければならない。
2 前項の払込金額の下限が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、同項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
3 第一項の決議は、前条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の末日)が当該決議の日から一年以内の日である同項の募集についてのみその効力を有する。
4 種類株式発行会社において、第一項の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定の委任は、当該種類の株式について前条第四項の定款の定めがある場合を除き、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
第二百一条 第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。
前項の規定により読み替えて適用する第百九十九条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定める場合において、市場価格のある株式を引き受ける者の募集をするときは、同条第一項第二号に掲げる事項に代えて、公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法を定めることができる。
公開会社は、第一項の規定により読み替えて適用する第百九十九条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、同条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項(前項の規定により払込金額の決定の方法を定めた場合にあっては、その方法を含む。以下この節において同じ。)を通知しなければならない。
前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
第三項の規定は、株式会社が募集事項について同項に規定する期日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項 から第三項 までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。
第二百二条 株式会社は、第百九十九条第一項の募集において、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に対し、次条第二項の申込みをすることにより当該株式会社の募集株式(種類株式発行会社にあっては、当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨
2 前項の場合には、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有する。ただし、当該株主が割当てを受ける募集株式の数に一株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。
3 第一項各号に掲げる事項を定める場合には、募集事項及び同項各号に掲げる事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によって定めなければならない。
一 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役の決定によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(株式会社が取締役会設置会社である場合を除く。) 取締役の決定
二 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(次号に掲げる場合を除く。) 取締役会の決議
4 株式会社は、第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、同項第二号の期日の二週間前までに、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
5 第百九十九条第二項から第四項まで及び前二条の規定は、第一項から第三項までの規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合には、適用しない。